小児の近視進行抑制治療(作成中)
近視とは
物がはっきり見えるためには目の中に入った光線のピントが網膜(=カメラのフィルム)上に合う必要があります。近視では光線のピントが網膜より手前に合うことで物がぼやけて見えます。
小児の近視が増えています
小児の近視が世界的に増加しています。日本では小学生の約4割、高校生の約7割が裸眼視力1.0未満になっており、そのほとんどが近視によるものと考えられています。近視のほとんどは眼球が前後に伸びることで起こりますが、この眼球の伸びは低年齢の頃により大きいことが知られています。2022年の文部科学省の調査では小学1年生では近視児童は17%でしたが、小学6年生では50%の児童が近視になっていました。
近視が目に与える影響と対策
近視眼では裸眼視力が低下するだけでなく、将来、緑内障や網膜剥離などの病気になりやすくなります。また、近視が強くなればなるほど、その可能性が高まります。緑内障は日本人の視覚障害(身体障害者手帳の取得)の原因疾患として最多です。このため、子供たちが生涯にわたって良好な見え方を維持するためには近視の発症と進行を予防することが大切です。そして、前述のような近視の発症・進行時期を考えると、より早い時期に取り組むことがより効果的ということになります。
近視には遺伝が関係していますが、環境による影響も大きいと考えられています。近視の進行を抑えるために屋外で過ごす時間を増やすことや、近くを見続けないことが大切であることが知られています。しかしながら、普段から1日2時間、屋外で過ごしたり、デジタル化社会の中で近業を控えるのは容易でないかもしれません。
近視の進行抑制治療
小児の近視進行抑制治療として国内で可能な方法として以下のようなものがあります。
当院では①点眼薬(リジュセア®ミニ点眼液0.025%)、②コンタクトレンズ(EDOFレンズ)による治療に対応しております。
①点眼薬による治療
アトロピンという点眼薬が近視の進行抑制に有効であることが示されています。アトロピンはピントを調節する毛様体筋を休める(調節麻痺)作用があり、1%アトロピン点眼が古くから小児の遠視や斜視の検査で用いられてきました。近年、低濃度のアトロピン点眼が近視の進行抑制に有効であることが海外の研究で明らかになり、日本でも臨床試験でその有効性が確認されました。そして、2025年4月に0.025%アトロピン硫酸塩水和物であるリジュセア®ミニ点眼液0.025%が承認、発売されました。
図のように、この点眼薬を継続して使用することにより、近視が強くなる(近視度数が強くなったり、眼の長さが長くなる)変化を抑えることが期待できます。ただ、近視を軽くしたり、完全に進行を止めたりするものではありません。進行を抑えることで裸眼視力の低下を抑えると同時に、将来、眼の病気になる危険性を下げることが治療の目的になります。主な副作用として臨床試験では10%程度のお子さんが眩しさや見づらさを感じることがありましたが、点眼を中止することで回復しています。リジュセア®ミニ点眼液0.025%による治療は自由診療になります(健康保険や各種医療扶助は適用外です)。
②コンタクトレンズによる治療
③オルソケラトロジー
④レッドライト治療
※近視はレーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)で治療することにより、裸眼視力を改善させることができます。しかしながら、前後に伸びた眼球の長さを戻すことはできず、近視に伴う病気になりやすいこと自体は変わりません。
資料;文部科学省近視実態調査、参天製薬ホームページより